Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
五
三戸野山の生活は、まる二年つづいた。
山深い尼寺に、尼よりもさびしく暮していたが、いつか木樵や里の者も、素性を知って、
「叛逆人の娘じゃ」
「死にもせで、生きのびていることよ」
と、垣の外を覗いて通ったりした。
三名の郎党は、彼女が、何時ふと死の誘惑に負けて、自殺しまいものでもないと、その警戒にも、片時も眼を離さなかったが、彼女が、露骨にうける辱めや、危険や、さまざまな迫害を防禦するためにも、二年間、どれほど気をつかったか知れなかった。
「主殺しの娘に、糧は売れぬ」
などという悪口やら、
「お前さま達は、お侍のくせに、大逆人の娘に仕えて、何でそんなに忠義だてしなさるか。主を殺した人間の一族には、世間がこう酬うぞと、思い知らせてくれたがいいに」
と、面と向っていう朴訥な里人の悪罵にも、じっと、忍んでいるしかなかった。
まして、迦羅奢自身は、うっかり出歩くこともできなかった。
峰つづきの寺へ、信長の忌日と、亡父光秀の命日には、必ず参詣を欠かさなかったが、被衣をかぶって出ても、駕に潜んで行っても、山家にない美しさに、すぐ気づかれて、
「光秀の娘じゃ」
「逆賊の娘が、あのように美しい」