Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
――今夜のおまえの行いの如きも、武人の妻として平素の心がけが働いたのだろうが、すでに主体の組織に参加したのだから、今までの単なる家庭の主婦というだけの観念ではならぬ。一家とか良人とかが主体ではなく、それは一単位にすぎぬ。もっとその上にある大きな主体に奉じることを念としてもらいたい」
と、諭した。
「よく分りました。私の戴いたお叱りですが、皆さまにもその通りお伝えいたすことにいたします」
その後を、担架にのせられた弁蔵爺やが、静かに通って行った。鎮台内の聯隊病院は、今夜から戦時病院に編成されていた。
「爺さんが初入りの患者だぞ」
担架の毛布をのぞいて、兵隊は笑ったが、弁蔵は笑えない顔していた。
いや、それよりも、深刻な悔いを面にたたえながら担架のあとから悄然と従いて行ったのは、岡本軍曹であった。――将軍が玖満子に告げた言葉は、そのまま彼の脳裡にも深く自省を与えていた。
八
翌十九日の朝になると、薩軍の前進は、刻々と報告され、一挙、熊本を席捲して、北上しようとする颱風のような全軍の相貌と殺気は、もう鎮台兵の肌近くひしひしと迫って来た。
ところが、その朝の十一時頃である。