Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
薩軍の包囲態勢はすでに整ったとみえて、着弾はかなり正確となり、今し生れた呱々の声する産室の附近にも、幾つか落ちて土けむりを揚げた。
十
夜になると病棟の窓々は、染硝子でも嵌めたように真赤になった。
昼間ほどではないが、相互の砲声はまだ熄まない。市街には数ヵ所から火災が起っている。鎮台側の諸所の防禦陣地にも火の手が望まれる。
ここの鎮台野戦病院の近くでは、樹や藪が焼けていた。だが、この大きな兵火を八方に見ている眼には、煙草の火が落ちているほども誰も気にはしない。生木のバチバチとはぜる音が白い寝床の耳ちかく聞えてくる。
「……粥湯を召しあがりませんか。お姉さま。谷将軍の奥さまが、粥湯を煮てここへお持ちくださいましたが」
幹子は、産婦の姉の枕元へ、そっと告げた。
与倉中佐夫人の鶴子は、幸いにも安産であった。今朝、味方の熊本軍、敵の薩軍、相互の砲弾がいちどに鳴りとどろく中に産気づいて男の子を生みおとしたのである。もとより籠城中だし、軍病院ではあり、産婆などはいないので、あか児をとりあげた時の皆のあわてかたといったらなかった。
「鶴子さま。お起きになってはいけませぬ。