Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
「たしかに通ってよいのか」
「念には及ばない」
「それならなんで」こう云いかけたが、来太は唾を吐き、刀にぬぐいをかけた、「――ばかな人騒がせをするものだ、どうせ通すなら、よけいな手間をかけなければいい、おい、みんなゆくぞ」
関役人や千人同心組の者たちは、すでに脇へ片寄っていた。
登世はするどい眼で、平四郎の顔をじっと見まもっていたが、来太が戻って来ると、すばやくなにか囁き、そして駕の中へと入った。そのとき、関屋のうしろで、山鳩の鳴くのが、のどかに聞えた。それはまるで、驚破という一瞬が、無事におさまったことを祝福するかのような、いかにものどかな声であったが、おそらく誰も気がつかなかったであろう。柳沢家の人たちは、西の木戸の外へ出て、荷駄の用意をととのえ、登世の駕もあがった。
来太は小橋与力のほうへいって、
「この先の関所で必要だ、同心をひとり証人に借りてゆくぞ」
と云った。小橋甚兵衛は平四郎を見た。平四郎は頷いた。そこで与力は部下の若い一人に、かれらと同行するように命じた。
菱屋庄兵衛は、(弓に矢をつがえたまま)次高来太と共に、最後まで木戸口に残っていたが、それもやがて、荷駄のあとを追って去ると、杉戸口から青山主馬が出て来た。