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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

封を切ってみると、中には署名はしてないばかりか、それは実に妙な手紙でした。

――私は本日午後一時に銀座のS喫茶店へ行って二時までそこで過ごし、二時三十分に東京駅の二等待合室で三時三十分まで汽車の発車をまち、四時に帝国ホテルのグリルで食事をとることになっています。――

これだけで手紙の文句は唐突として終わっていました。誰だって無名のしかもはじめての差出人からこんな手紙を貰ったら、きっと人ちがいに相違ないと思うでしょう。ただ自分のその日の行動のスケジュールが書いてあるだけなんですから。しかし妾は実にはっきりと、それがあの人の手紙だということばかりでなく、その手紙が何を意味しているかもすっかりさとってしまいました。

あの人はきっと妾に会いたくてたまらないのだと妾はすぐに断定したのです。そしてS喫茶店と、東京駅の待合室と、ホテルのグリルとへ行っている時刻を知らして、その時刻に、どの場所かへ妾に来てくれという意志を知らしてきたのにちがいないのです。妾の心は躍りました。急に自身と勇気とが、しおれきった妾の心をしゃんと立ち上がらせました。時計を見るとまだ間にあいますので、妾は最初に指定されているS喫茶店へすぐさま行くことにきめました。