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Japanische Klassiker mit Furigana

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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme

Aozora Bunko

患者は気が張りつめて居たせいか案外平気であったが、でもその額の上には汗がにじみ出た。

私は看護婦に彼の身を支えて居るよう命じ、それから、患者の両脚を蔽った白布の上に、琺瑯鉄器製の盆をそっと載せ、ガーゼの覆いを取り除けた。五本の指、掌、前膊、上膊、肩胛骨、その肩胛骨から発した肉腫が頭となって、全体が恰も一種の生物の死体ででもあるかのように、血に塗れて横たわって居た。患者の顔には、無力にされた仇敵を見るときのような満足な表情が浮び、二三度その咽喉仏が上下した。彼の眼は、二の腕以下の存在には気づかぬものの如く、ひたすらに肉腫の表面にのみ注がれた。

凡そ三分ばかり彼は黙って見つめて居たが、急にその呼吸がはげしくなり出した。ヨードホルムのにおいが室内に漂った。

「先生!」と彼は声を顫わせて叫んだ。「手術に御使いになった小刀を貸して下さい」

「え?」と私はびっくりした。

「どうするの?」と細君も、心配そうに彼の顔をのぞき込んでたずねた。

「どうしてもいいんだ。先生、早く!」

私は機械的に彼の命令に従った。二分の後私は、手術室から取って来た銀色のメスを盆の上に置いた。