Japanische Klassiker mit Furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme
あんまり苦しくては困ると思った。又なるべくなら、死後、自殺したように思われぬものであってほしいとも思った。そこで、彼は図書館へ行って、一応亜砒酸の作用を調べて見ようと決心した。
上野の図書館は、コレラ流行時に拘わらず、意外に賑って居た。死神が横行するとき、読書慾の起るのは古来の定則である。彼は毒物のことを書いた書物を請求したが、驚いたことに日本語で書かれた医書は悉く貸し出されて居た。「やっぱり、みんな生命が惜しいからであろう」と、考えると、彼は、生命を捨てるために医書を読みに来た自分を顧みて苦笑せざるを得なかった。仕方がないので彼は英語の薬理学の書を借りて、貧弱な語学の力で、亜砒酸の条を辛うじて読んだ。
すると意外にも、亜砒酸の症状は、コレラの症状に極めてよく似て居ると書かれてあった。彼はこれを読んだとき、すばらしい発見でもしたかのように喜んだ。何となれば、亜砒酸をのんで自殺したならば、こういうコレラ流行の時節には、必ずコレラと間違えられるにちがいなく、従って自殺しても自殺だとは思われないからである。医師というものは誤診するために、神様がこの世に遣されたものであるらしいから、亜砒酸で死ねば必ずコレラで死んだと間違えられる。