Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
年暮の松や竹も、眼に映らないのである。辻や、橋の畔で、人だかりを見ると、
「落首だろう、読んで来い」
と、駒をとめた。
若党の佐介が、走って行って、
「見て参りました」
「なんとあった」
「――細川や水野ながれは清けれど……」
「ふむ」
「――ただ大甲斐の隠岐ぞにごれる」
「ははあ、町人どもの勘は、怖いものじゃ。義士のお預けをうけた四家のうちでも、細川家と水野家は、情ある取扱いをしているが、毛利と松平の二家は、冷遇じゃという噂がある。さてこそ、その諷刺であろう。ははははは、やりおるの」
伝右は、会心の時にやる独り合点を繰返して、
「やりおるやりおる」
と、駒を、金杉橋へすすめた。橋の上へ立つと、寒い潮の香と千鳥がそこらの川口から吹き上げた。
「はてな、今日も――」
そこで彼が、眸を、反対な左の河岸へ反らした。
木枯らしに吹かれて、女は二つの長い袖を胸に掻きあわせていた。戸ざした施米小屋の蔭に立っているのである。寒々と、袂の先や、裾がうごいた。そして、遠方からでもすぐ眼の中へとびこんで来るような江戸紫の布を、たらりと頭巾にしていた。
どこか淋しい影のある顔だちだった。