Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
「へい」
権十の顔は硬ばっていた。
鑑札の船戸籍を見て、
「醤油船だな」
「へえ……左様で」
「苫を除れ」
いいながら、役人たちは、ずかずかと歩き廻り、自身でも、船板を上げたり苫を剥くったり、厳しい眼を光らしていたが、
「娘。――その樽は何だ」
と、そのうちに、お松の姿を見つけた者が、お松の倚りかかっている四斗樽を見つけて訊ねた。
「エ? ……あんだねえ」
お松は、樽に倚りかかって、目笊の中の野菜の皮を剥いていた。
「――退けっ」
「この樽かね」
「空樽か」
「味噌が入ってら」
「味噌樽。――其方どもは父子二人暮らしではないか。どうしてこんな大きな樽に入れるほど味噌が要るのか」
「ホホホホ。これはおらたちのたべる味噌じゃあねえにさ。江戸のお客様に、正月頃、味噌漬を頼まれていたので、今度積んで行ったところがなよ、そのお客様の家が、神田とやらへ越しちまったというで、仕方なしに持って帰えって来たのだによ」
「ふム、味噌漬か」
いいながらその同心は、不意に素槍の穂をしごいて、樽の横腹をそれで突き徹そうとした。
「あっ、何するのけ」
お松はびっくりして起った。膝の上の目笊から里芋がころがった。