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Japanische Klassiker mit Furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme

Aozora Bunko

「仕方がございません……良人にも、そんな目に遭う原因があったのですから」

途々、覚悟をしていたものか、眼に涙も持っていなかった。良人の兇死に駈けつけて来たような狼狽は少しもなかった。

「警察の方はまだ? ……」

「いえ、来ていらっしゃいます」

女中は、旗岡巡査の影を指さした。――と、気がついて、夫人は前へ歩いて来た。そして慇懃に、

「お手数を煩わせまして、何とも、何とも、恐れ入ります」

と、いった。

「…………」

旗岡巡査は、何とも答えなかった。夫人が俥の蹴込みからおりる姿をちらと見た刹那から旗岡巡査は何故か化石したようにそこの位置に突っ立っていたのである。そして夫人の挨拶に対して、顔さえ横へ反向けていた。

夫人は重ねて――

「わたくしが、生糸商の木村専右衛門の家内の那珂子でございますが」

いいながら、何気なく、巡査の胸から横顔を仰ぎ上げた。――途端に、弾かれたように眸をみはって、

「あっ、貴方は!」

と、絶叫して、蹌めきかけた。

「奥様」

女中は驚いて、後ろから抱きささえた。彼女の顔は、死人のように、唇の血の気まで失っていた。

三

「どうなすったのか」

旗岡巡査は冷やかにいった。