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Japanische Klassiker mit Furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme

Aozora Bunko

吸い切った煙草を、枕元の灰皿に揉み消しながら、

「――でも、海後さんは、ここへ這入って来る前から、私だっていうことを、知っていたんですか」

「標札を見てすぐ思いだしたわけです」

「だって、あれからもう……」と指を折って――「十四、五年になるんですよ……その私が――こんな踊りッ子みたいな恰好はしているけれと、もう三十にかかりかけているお婆アちゃんになってるんだものね。……標札の名を見たばかりで、どうしてすぐ、思い出しましたか」

「あの時のこと、生涯、忘れてよいものではありません。――お松ちゃんという名。それから船鑑札に書いてあった木島村という地名。――木島村、お松ちゃん。――こう二つならべて心に銘記していたものです。……もっと忘れ難いのは、潮来の真菰の中に船を繋いで暮したあの時の四日ばかりのこと、お松ちゃんは、わしの袴の血を洗って、綻びを縫ってくれた」

「…………」

聞き入りながら、お松は頬に涙の筋を光らせて、しかもその甘い涙を愉悦するかのように微笑んで、

「……じゃあ、海後さんは、これも覚えていますか」

と、自分のしている帯留を指で示した。

花菖蒲を象嵌した刀の目貫が、かつての形のまま帯留の金具となって用いられてあるのだった。