Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme

Aozora Bunko

旗岡巡査は、暴風雨のように翔ける血の中で焦躁した。

「……あ。下に来ているお巡査さん達の声でしょう。何かまた、いっていますよ。海後さん、あなたの御迷惑になるといけませんから、もう、話はよしましょう。いくら話したって、尽きませんものね」

寝台から離れて――こうお松はにこやかにいったが、それは泣いているとも笑っているともつかない不思議な顔の痙攣であった。

「まだ……まだ……もう二、三分はいいです」

旗岡巡査がいうと、

「いけません」

お松は首を振った。

「あなたは、どうかして、わたしを助けようなんて考えていたら、大間違いですよ。昔と明治の御世とは、人間の生命の値打がちがいますからね。……だけど、あたしゃあもう、生きるのに草臥れちまった。こんな豚に虐き使われて」

寝台の下の丸っこい死骸を睨めつけて――また、不意に耳を欹だてていった。

「海後さん、下で呶鳴っていますよ。もう駄目。……階段を駈け上がって来る足音がしてるじゃありませんか」

「だいじょぶです。扉は、鍵をかけてあるから」

「つまらない義理立てはよして下さいよ。そんなことを欣しがる程、今のわたしはもう素直な女じゃありません」