Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
そうしたらどうにか今の境遇に変りが起りはしないかなどと、妄想にばかり苦しめられて、夜眠っていても、
(おっ母っ。おっ母っ)
大きな自分の声に、眼をさました事などもあった。
――だが、こいつは牢の中では禁物だった。強悪無類の牢頭たるわしが、そんな弱音を顔いろに現わしたら、たちまちまわりの狼どもに舐められてしまう。
「やい、どいつか、おれの肩をすこし揉んでくれ。蜘蛛六、汝でもいい。うんと力を入れて……そうだその辺を」
蜘蛛六に肩を揉ませながら、猿のほうを見ると、猿は、朝の稗飯を食べてしまうと、例の如く独りだけ隅ッこにいて、達磨のまねをしている。いるのだか、いないのだか分らない。
他の者は――といえば、ちょうど何日もの時刻で、一つ所に泥鰌のようにかたまり合っていた。
牢は三間と二間半の頑丈な壁で出来ていて、明り窓は、たった一つ、壁の高い所に四角く切ってあるだけだった。勿論、その明り口にも、頑固な桟が打ってあるので、大きさほどな光は映さない。
しかし、晴れた日には、太陽がこの牢獄の上を越える一刻か半刻ほどの間ちょうどその切窓の桟から、幅一寸ぐらいな日光が、短い光線の棒をならべたように、牢の板の間に映すのだった。