Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
おとといも、行かずにしまったから)
又十郎は、頬杖ついて、お駒と向い合って痴話でもしているように、お駒の表情や云い草までを、空想していた。
(いっそ、怒らして、仲違いして切れようか。そして兄が云うように五、六年眼をつぶって、廻国修行に出る)
そう考えたが、彼には到底、剣で生涯を立てる気にはなれなかった。柳生家は兄が継ぐ。当然自分は、分家して、他藩の指南番か何かに抱えられて、その大名の国元へ赴任して行く――
(一生が見えている事あつまらねえ!)
又十郎の呟きは、どうしてもそこに落ちるのだった。かなり自由な家庭だし一万石という家の三男に生れ、都会的な遊びや風潮には、兄弟中でもいちばん染まっている彼である。粋で伝法な市井の風俗を好んで、父や兄にいくら喧ましく云われても、袴が嫌いで、着流しで出るといった風な彼だった。
もっとも、今流行っている隆達節にも。――君と寝ようか、五千石取ろか……というあの唄が、武士の中にさかんに謡われている時代だから、又十郎と似た考えでいる者は、彼のほかにも巷にはいくらもあるかも知れなかった。
「おや? ……兄貴が何かやっているぞ」
庭木を隔てて見える向う側の十兵衛の部屋へ、又十郎はふと眼を向けた。