Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
彦太は、憂欝な眼をあげて、雪に埋った三月の往来をぼんやり眺めた。
弁政は、脚絆をかけて、店口で草鞋をはきながら、
「彦太、行って見ねえか」
彦太は、首を振った。
「行っといでなさいまし……」
急激に、社会はうごいて行った。首が集まれば、世間は、この状態が、どうなるか? という話題だった。大老殺害の記憶が消えないうちに、又、坂下門に、白昼、安藤対馬守の兇変があった。次の年には、もう大和や上方は、戦だという、つきつめた噂が、江戸を暗く蔽った。
久世様お留守居屋敷、上弁七十人
浜町様、仕出し、椀だね十七人
清風亭へ、月ざらい弁当百二十人
彦太は毎日、そんな文字を帳面へなすりつけていた。無口が彼の性格になりかかって、店の者は、彼の人間が変って来たといった。
「はやく、どうかしてやらなくちゃいけねえ。預かってる七十両を、俺が、融通でもしちまったように思ってるんじゃねえか」
「そんな事はありませんよ」
お村と弁政も、彦太が、帳場から往来ばかりじっと見ている眼に気づいて、時々、心配はしているらしかった。
帳場格子に、肱をついて、彦太はまったく往来ばかりじっと見ていた。