Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
蜂谷は、こざっぱりしたパジャマの中で、胸がつまって息がほそくしか通わないような声を出した。
「いいんだ、伸子さん」
「ほんとに、放っといていいの?」
うなずくといっしょに、蜂谷は強いひと息を内へ引いた。
「僕は、きっと佐々さんは来てくれると思っていたんだ」
涙の出ないすすり泣きのようなものが、枕についている蜂谷の顔を走った。
「佐々さん、僕は苦しいんだ」
片手をつかまえられたまま、伸子は、蜂谷の体のどこかが工合わるくて苦しいという意味と、二人の間にある緊張が苦しいという意味とを、ごっちゃにうけとった。
「伸子さんがいま入って来て、僕を見たときの、あんな優しさ」
伸子の手をはなして、蜂谷は、小さい子供がやるように、両方の腕を伸子に向っていっぱいにのばした。
「僕はくるしいんだ、伸子さん」
いつの間にか伸子は椅子から立ちあがっていた。そして、首をかしげ、目鼻だちのぱらりとした顔の上に不思議なかがやきを浮べながら、黙って、まじめに枕についている蜂谷を見おろした。いつ、靴がぬがれたとも知れず、伸子の体が、軽く、なめらかに、蜂谷の寝台のかけものの下にすべりこんだ、厳粛な、そしてやさしい表情で蜂谷を見つめたまま。