Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
物売がやったように、上と下とのキの音に、いかにも歯をむき出した響きをもたせて素子はくりかえした。
「だから、口で云えばいいのよ」
「口なんかで間に合うかい!」
それは、素子独特の率直な可笑しみだった。伸子は思わず苦笑した。
「だって、ぶつなんて……どうして?」
支那の女という悪口が、それほど素子を逆上させる、その癇のきつさが、伸子にはのみこめないのだった。
「そりゃ、ぶこちゃんは品のいい人間だろうさ。淑女だろうさ。わたしはちがうよ――わたしは、日本人なんだ……」
「だからさ、なお、おこるわけはないじゃないの。ああいうひとたちには、区別がわかりゃしないんだもの。ここにいるのは、昔っから支那の人の方が多いんだもの」
街で伸子たちが見かけるのも中国の男女で、日本人は、まして日本の女は、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)じゅうにたった十人もいはしない。その日本婦人も、大使館関係の人々は伸子たちよりはもとより、一般人よりずっと立派な服装をしていて、外見からはっきり自分たちを貴婦人として示そうとしていた。伸子たちにさえ、日本人と中国人の見わけはつかなかった。