Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
「あなたってまったく不思議ねえ」
その声のなかから腹立たしさも軽蔑も今はすっかり消えた調子で、伸子がまじまじと素子を見た。
「あなたの生活に、これまで具体的に男のひとが入って来たことってなかったんでしょう」
「そりゃないさ」
「そういう意味からだけ云えば、あなたは、わたしより純潔と云えるわけなのに――あなたは、わたしより純潔じゃないわ」
素子はすこし顔を赧らめ、立ち上ってタバコに火をつけた。
「中学の男の子みたい? そうお? 具体的に経験されていないから却って、男と女のことっていうと、きまりきった形でいやにむき出しに頭の中で誇張されるのかしら……」
素子は、タバコをふかしながら、ネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)河に向って二つの大きい窓のひらいている夜の室内をあっちこっち歩いた。伸子のいうことから、何か自分への目がひらかれるところがあるらしい表情で。――考えながら歩きまわって、素子はやがて、
「もういい。ぶこ」
と、椅子のところへ立ちどまりながら云った。
「そう分析されちゃ、やりきれるもんか」
伸子は黙った。けれども、伸子はこれまでのいつのときよりもはっきりした輪廓で素子を理解できたように思った。