Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

いま女は伸子の病室の外まできこえるような声では話さない。日本の女が、襟の間に片手をさしこんで物思いするように、女は外套の襟のところへ手をさしこんでうなだれた。肩にふりかぶっている髪はこんがらかっていて雪明りのなかによごれて見える。

伸子は、よけい重苦しくなった脇腹へ、ゴム湯たんぽをひっぱりあげながら、

「早くかえろうと思うなら、気を立てることは禁物ですよ」

と、疲れの響く声になって云った。

「鍋の下で火をたけば、病気もそれにつれて煮えたつからね」

そして、一つの思いつきを女に提案した。同じ病室から退院する誰かに家の住所を教えて、子供に来るようにつたえて貰うように、と。伸子は大儀になって枕の上によこたわった。女はうつむいた頭をもたげて、あてもなく二重窓の外の雪景色に目をやっている。伸子にそっちの景色は見えない。二重窓は寝台のちょうど真上にあたるところにあるから。

伸子の病室の人気なさと沈黙とが、その女の気分に最後のおちつきを与えたらしかった。彼女は、暫くすると自分に云いきかすように、

「じゃあまあ、当分辛抱してみることだね」

と、膝に手をつっかって、身をもちあげるように長椅子から立ちあがった。