Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
素子も、ただ物ずき心で陰惨なあの夜の女カフェーの光景を見ていたのでなかった証拠に、彼女としては珍しくそれについて皮肉めいたことも云わず冗談らしいことも云わなかった。二人とも、自分たちの生活は下水の上にわたされている一枚のふたの上に営まれていて、しかもそのふたはさまで強固でないことを知らされたわけだった。
その晩も、伸子は、スーツが着よいか、着にくいかというだけの話にとどまって、素子が、上衣のうらのほつれを直しているのを見ていたが、やがて、
「あなた、ベルリンていうところを、どう思う?」
素子にむかってきいた。
「おもしろいところと思う?」
「さあ、おもしろいっていうのとはちがうんじゃないか」
「わたしはドイツってところ、やっぱり気味がわるい」
やっぱりというのは、この間うち幾度かベルリン国立美術館へ行ってドイツの絵を見たとき、伸子は、古い絵に描かれているヴィナスさえも蒼白く肩がすぼけて、腹のふくらんだ発育不全の女の姿で、冷たく魚のようで気味がわるい、とくりかえし云ったからだった。
「ベルリンの生活って、何だか矛盾に調和点がないみたいだわ」
一方には、津山進治郎が日本も見ならうべきだという軍国主義があった。