Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
多計代は、すっかりかすれてしまった声で、やっとききとれるぐらいに云った。
「きょうというきょうは、もうすこしで、わたしも殺されるところだったよ」
多計代は、そう云いおわって、息がつまって来るのに抵抗するような咳ばらいをした。
まじりけない不安にはりつめられていた伸子の表情のかげに、多計代の言葉の誇張を疑う色が動いた。
「殺されるなんて――」
だれに? どうして? あり得ないことだ、と伸子は思った。伸子は訊くように、わきに立っているつや子をかえり見た。うちのめされたようになって、ぼっとしている十三歳の肥ったつや子の様子は哀れだった。
「どういうことだったのか、ちっともわけがわからない」
とがめるような伸子の調子に、多計代が、
「和一郎が来ていたんだよ」と答えた。「あの、おこりようったら……つや子さんも見ていただろう。まるで親の見さかいがなくなるんだから――、おそろしい」
くっ、というむせび泣きの声と一緒につや子がくるりと向きなおって、廊下ごしに客室と向いあっている自分の小部屋へ逃げこんでしまった。
午後二時ごろ和一郎が来て、引越すホテルが見つかったから、金を渡してくれと申し出た。