Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.106 Zeichen · 292 Bildschirme
二人はそのまま両国へ向いました。
「お秋はここへ来るに違いない。お前は西にいるがいい、俺は東の方に頑張る」
平次は橋を渡って向うの方へ行きました。
*
それから一刻あまり、橋の上の往来の全く絶えた頃、浜町の方から、月下の橋へ急ぎ足に差しかかった娘があります。
真っ直ぐに延びた身体、正面を向いた顔、何の憂愁もない事務的な足どり、あまりの平静さに、ガラッ八は危うく見落すところでしたが、橋の欄干へ寄って、何の思い入れもなく、あわや身を躍らしそうになったのを見て、ガラッ八は死物狂いに駆け寄りました。
「待った、――待ってくれ、死ぬには及ばねえ」
「まア、八五郎親分」
狂言とは、何という違いでしょう。娘の身体を引寄せて、犇と押付けながら、胴ぶるいをしていたのは、何とガラッ八自身の方ではありませんか。
お秋は八五郎の腕の中に任せ切って、もがきもどうもしませんでした。悲しく挙げた顔は塑像のように硬張って、蒼白い頬は涙の痕もなく乾き切っておりました。これは満足しきった人の顔です。しかも、この世の人とも思えぬ美しい顔だったのです。
平次はそれを、遠くの方から黙って見ておりました。