Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

Lesen Sie 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.106 Zeichen · 292 Bildschirme

Aozora Bunko

「面白くない家だね、親分」

「金が溜りすぎて、家の中が冷たくなっているんだよ」

「へッ、こちとらも少し冷たくなってみてえ」

「馬鹿だな」

漁師町の孝行藤六の家はすぐ解りました。

形ばかりの九尺二間で、雨戸の代りに筵を下げてある有様で、その前に立っただけで、平次は胸を打たれるような心持です。

「御免よ」

「ハイ」

筵をかかげて顔を出したのは、――平次は思わず息を呑みました、十八九の素晴らしい娘、身扮の汚なさも、髪の乱れも、江戸の真ん中では想像も出来ないひどさですが、陽に焦けた浅黒い顔の品のよさと、娘らしい健康な愛くるしさは、これも江戸の中などでは、金の草鞋で探しても見付かるような代物ではありません。

「銭形の親分をつれて来たぜ、お春」

八五郎は後ろを振り返って、自分の偶像を拝ませるような勿体らしい顔をしました。

「まア」

お春は真っ赤になりました。どんな珍客があったところで、羽織一枚、前掛一つ換えることの出来ない暮しだったのです。

「兄貴は?」

ガラッ八は訊ねました。

「まだ戻りません」

「少し訊きたいことがあるんだが」

平次はこの娘だけに訊きたいことがあったのでしょう。