Classiques japonais avec furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
その間にも、百何十ヵ村の不平と非難は、彼の一身に集まって、幾たびか、暴動が起りかけ、幾度か、ふくろ叩きに会いかけたり、河の中へ故意に突き落されたり、さまざまな迫害はあったが、工事の大変更に、百姓たちの抑えていた憤りはまた火を呼んで爆発した。
「おら達がこうやって働くのを、あの奉行めは、遊び事だと思っているのだぞ」
「何年間も、銭一文もはらわねえで、牛や馬よりこッぴでえ使い方しさらして、それをまたうッちゃって、他のほうへかかるたあ何事だ」
「もう、仕事に出るな、死んでも出るな」
「いッそ、ぶっ殺せ」
「そうだ、ぶっ殺せ、あいつを」
険悪な晩が、幾晩もつづいた。夜になると、御月山の小屋に坐っていてもそれがわかる。遠い山麓に点在する部落部落で、火を焚いたり、鐘を撞いたりしているもようが、赤い空に映って見えるからだった。
その早鐘は、お珠の胸をさわがして、眠らせなかった。
「――お珠さん、お珠さん……。もうお寝みかい、安太郎だよ。心配になるからやって来たんだが、ちょっと顔をかしてくれないか」
小屋の窓の戸をコツコツ叩きながら、低声を弾ませて云う声がする。――お珠は身を起しかけたが、父の寝息をながめてから、そっと外へ出て行った。