Classiques japonais avec furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
二
感情が先に走って、彦太は、いいたい事が、いえないのだった。鼻を熱くして、拳でぼろぼろ流れる涙をこすった。お村は、義理の仲だし、弁政も、江戸人の通癖で、口ではくそけなしにしてるが、肚の中では決してそうでない事を読んでるので、
「ま、ま。話は明日にして、彦さん、どてらを上げるから、脚絆だの、そんな物、脱いでおしまい、それに、お腹も減ったろうし、支度のできる間、銭湯へでも行っといでなさい。店の者をつけて上げよう。――誰か、彦さんに、町の湯を、教えておあげよ」
無理に、立たせて、彼を湯へ出してやった。
二
彦太は、弁政の店の帳場へ坐った。
故郷の家産一切をまとめて来た七十余両は、そのまま、伯父の手へ預けて、帳付けだの、若い者の手伝いをしていた。
田舎の食えないと、江戸の食えないとは、根本的に違ったものであることに、彦太は驚いた。
弁当の空き殻には、白い飯が、ろくに箸もつけず、残って来るし、料理屑は、どんどん捨てるし、これじゃ、野良犬が殖えるはずだと思った。
「どうして、これで江戸が不景気か」
彦太には、判らなかった。
問屋町辺の町人生活は、彼の眼で眺めると、松代藩の武士や、お城の生活よりは、よほど贅沢で放漫だった。