Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

五

「この通り、手形は所持いたしておるが、あったにしても、これは人に示すわけにはゆかぬし」

「へ。どういうわけで」

「実は今朝、江戸表の桜田門で、大老掃部頭の首級を挙げた浪士十七名の中に、自分も加盟して働いた一人なのだ」

「げっ、じゃあ……あなたは水戸の」

「拙者は海後磋磯之介という者。首尾よく大老を討ち止めた上、その場から各※(二の字点、1-2-22)ちりぢりに落ちのびたが、早くも、幕吏の手は行く先々に伸び、ここまでは、ようやく逃げて来たが……もはや進退も谷まった。この上はわしを突き出すとも、否とも、その方の一存次第――」

権十の愕きは、最初の驚きの比ではなかった。歯の根も、体も顫くばかりで、勿論、それに対して、否とも応とも、返辞などはできなかった。

五

大老が刺し殺された。

襲撃したのは水戸浪士の十七名で、その場で、割腹した者もあり、自首した者もあり、逃げ落ちた者もある――という。

何しろ江戸表は覆りそうな騒擾だったらしいが――そんな噂を途中で聞いても、萍ぐらしの権十にとっては、陸の地震のようにしか考えられなかった。しがない鰥の船頭には、一国の宰相の死よりは、夕方の酒の桝目と、晨の米の値のほうが、遥かに実際には強くひびく。