Classiques japonais avec furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
四
おさらばです」
右門は、別れかけたが、ふと、
「兄上、この女」
と、橋の欄に縛られているお由利を、彼はまだ痛々しげに、眼から捨てきれない容子で訊いた。
「触るな。棘のある花だ。そうしておけ」
十兵衛が云うと、お由利は、きっと眸をつよめて、その顔を見返した。彼女の嚥んだのは、毒ではなかったのかと右門はやっとその時覚った。
「若様、若様たち」
喜内老人であろう、二階笠の紋じるしの提灯を振って、河堤から、橋を越えて去りゆく兄弟へ、涙声をふりしぼった。
四
天草の乱、島原の変は、その翌々年、天下を一時、暗澹と脅かした。兵火は歇んだが、十兵衛は四年、又十郎も約九年間は帰らなかったという。右門は、その後、父但馬守の位牌を捧げて、国元の大和柳生の庄へ引籠った。芳徳寺の第一世烈堂和尚は彼である。また、春秋十数年の後――但馬守の跡をついで将軍師範であった十兵衛三厳は、ある年、郷里の柳生にあって、野外に放鷹中、忽然と、急病で死んだ。
慶安三年の三月。寿、わずか四十四。ある者は、草間がくれの鉄砲で撃たれたといい、ある者は、毒水にあたって死んだといい、異説まちまちであるが、もしこの頃まで、お由利が生存していたとすれば、またそこに、べつな想像をしてみる余地もある。