Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

二

湿々した谷間にかくれていたので、暗い所は閉口ですから」

「よかろう」

峰の中腹へ出て、山芝のうえに兄弟は坐った。――眼の下に、ポチと灯が一つ見えた。

「ああ、家が見える」

磋磯之介は、思わず伸び上がって、その灯の下にいる嫂や小さい甥や姪たちの団欒を眼に描いた。

二

「酔いました――兄上」

磋磯之介は、腕を伸ばし、子供のように星を見つめた。

「いいなあ、やっぱり生きているというのはいいなあ。……死んだものはつまらない。死んだ者にもう世の中を動かす力はない。だが、生きているおれにはまだある」

「弟。……これから先は、くれぐれも、身を守って、迂濶なことをしてくれるなよ。――おまえの今の呟きの通りだ。これから先の何十年は、余生だと思って楽しんでくれ」

「愛護いたします」

心から頭を下げて――ふと、彼方のひろい闇の底に見える無数の灯に眼を瞠った。

「あれ、何でしょう、兄上」

「烏山の町の灯だよ」

「それは分っていますが、何処の辻の辺になるか、ひどく、提燈の灯らしい光が、かたまって動いていますが……」

「うム……成程」

「捕手だっ」

愕然と、起ちかけると、弟の腕を抑えて、粂之介は、静かにいった。