Classiques japonais avec furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
紫
もう一切、お気づかい無用じゃ。さ、いささかながら、細川家の心づくし、あたって下さい、くつろいで、あたって下さい」
紫
接伴役は、十九名いた。交代で非番をつくり、その日は、夕刻から家に帰って、休養することになっていた。
堀内伝右衛門は、町住居だった。いつも馬で、若党に仲間をつれ、高輪から細川家の上屋敷に近い町まで、わが家の寝床を思いながら、緩慢な馬蹄の音を楽しんで戻るのだった。
夕方の駕屋溜り、牛曳き、居酒屋、往来のどこへ耳を傾げても、今、江戸の話題は、赤穂浪士の讚美でもちきっている。伝右衛門は、それらの話をきくと、自分の名誉みたいに欣しかった。また、義挙の反映が、貧しい層にほど強く浸みとおっているのを知って、若党へ、
「世間は、底の方ほど、頼もしいものじゃ。赤穂の衆を見ても、大石殿はべつじゃが、大野、奥野、千石どころの重臣に、節操のある奴はおらぬ。義士の多くは、みな軽輩じゃ。肉食者いやしむべしと申すが、武士道は、上層になくて、下層にある。世の中を浄化する力も、国を支える力も、支権者にはのうて、無力な下層の方にあるというは、妙な話じゃぞ」
と、馬上からいった。