Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

二

……もう済んだのか」

「ええ、もうすぐに片づきまする」

「何じゃ、白い粉が、畳にも、そちの膝にもこぼれているが」

「殿様のお咳の薬を、御書を取りのける弾みに、つい滾してしもうて」

「あ、持薬のおくすりか。……由利、ちと話があるが、ここで聞いてくれるか」

「いけません。朋輩たちが、この頃は、とかくわたしを、嫉みの目で視ております。晩に……」

「晩に……」

「え。そっと、空地の塚の所で」

「あの石のところでか。……じゃあ、八刻が鳴ったら行っているぞ」

右門は、約束すると、一刻もそこにいては悪いように、あわてて錠口の外へ出て行った。

畳の目のあいだに沈んだ白い粉を注意ぶかく拭き取ってから、お由利は、懐中へ忍ばせた幾通かの書類を抱いて、その後から、静かに出て来て、錠口の後をピチと閉めた。

二

十兵衛も帰らない。又十郎も戻って来ない。ただ一人、暗然と但馬守だけが帰邸した。それももう網雪洞に廊下の暗い頃であった。

浜御成の出先で、憂うべき事件のあったことは、留守居の家臣たちはもう知っていた。だが、但馬守の悄然とした姿を仰ぐと、誰も胸がつまって、一語も云えなかったのである。

用人の笹尾喜内老人が、やがて但馬守の室へ這入って、しばらく、密やかに話しこんでいた。