Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

琴の爪

「いや、ちとお目にかけたいものがござる。――ほかでもないが、吾々どもも、やがて程なく、この世の埒も明こうと存ずる。お礼と申すも、今更らしい。お暇乞いに、ここで芸づくしを御覧に入れよう」

小屏風を持ちだして、その蔭で、助右衛門と勘六が、隆達の節を真似て唄った。瀬左衛門は、真面目くさって、堺町の歌舞伎踊りを踊るのだった。

屏風の蔭から、二人のお尻が突き出ているし、瀬左衛門が澄ましこんで毛脛を出して踏む足拍子も、おかしかった。みんな笑った。伝右衛門も、腹の皮がよじれた。涙をこぼしながら、笑いこけた。

十郎左は、床に入っていたが、腹ばいに首を上げて、

「困った大人どもでござる。伝右殿、あしたは、その手輩に、灸をすえておやりなされ」

と、いった。

「畏まってござる。したが、十郎左殿、その許のお腹のぐあいは」

「上天気」

「ははは、上天気」

「あすの日和も――」

「つづきましょう、よい春じゃ。いや、お寝みなされ」

「お寝み……」

「伝右殿、お寝み」

「お寝み……」

ひとり残らずいった。

琴の爪

翌日の四日は、非番に当っていた。伝右衛門は、一刻でも長く詰所にいたかったが、時刻が来たし、交代の同僚も見えたので、悄然と、中屋敷を退がった。