Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

二

「馴れている道ですから」

お那珂は、考え込みながら、帰る跫音まで気がねして、そっと、社家の裏口から出て行った。

裏木戸で、入れちがいに、米の袋を担った糠だらけの男とすれちがった。穀屋の若い者だった。

「今晩は――」

「こんばんは」

穀屋は、台所へ入って行き、お那珂は黙々と、足許の闇を見つめながら外へ歩いた。

二

桜並木につつまれた神社の石段は真っ暗だった。

一段一段、お那珂は、考えこみながら、重い足を落して行った。

(……どうしたって、添われないものを)

自分の愚かしさが分りながら、その愚かな執着が捨てられないのであった。

すると、後ろから、

「お嬢さん、提灯をお持ちなさらないで危のうございますよ。町までお送りいたしましょう」

と、先刻の穀屋の若い者が、米の袋を空にして追いついて来た。

「ありがとう。今夜は星も見えないんだね」

「そろそろ五月闇ですから」

「社家様のお宅では、以前からおまえの家でお米を取っているんですか」

「へえ、だいぶ永年御ひいきになっていますが――お嬢さん……」と、穀屋は声をひそめて、

「誰かこのごろ、あのお宅には、お客様でも滞在しておいでですか」