Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

摘んだ野菊

一

……ああ、月天心。この月を見ていると、天下は泰平、風を孕む不平の輩もないようだが……」

酒を取りに行った仲間の六助が、その時、彼方で、何か大きな声を出した。

「あっ。大機を埋けた跡へ、またいつもの綺麗な女が……?」

ふと、耳に止めて、右門はすぐ、

「えっ、女が」

と、莚から起ちかけた。

横に寝転んでいた十兵衛は、弟の袴を掴んで、

「右門。どこへ行く」

――そして彼方に佇んでいる仲間へ、大声で吩咐けた。

「六助。つかまえて来い。この辺りには、女狐がよく出る。逃がすなよ」

六助は、抱えていた酒壺を、草の中において、土饅頭の方へ駈けだした。

女は、すぐ気取った。六助が近づかぬうちに、原を斜めに横ぎって、大名小路の方へ走り込んだ。六助も、途中から向きをかえ、何処までもと、追って行った。

摘んだ野菊

一

「――坐れ。右門」

「はい」

「おれは知っている。あの大機の墓石へ、足しげく回向に来る女と、おまえは親しくしているな」

十兵衛は、莚の上に坐り直していう。右門の顔は、月より青かった。

「親しく、親しくなどした覚えはありません」

「きっとか」

「ええ。誓って――」

「ならばよいが」

と、十兵衛は、声を落して、いつものような語調に返った。