Classiques japonais avec furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
さっと、手を伸ばして拾いかけた時、もう一撃、肩を打たれて、
「参りました!」
思わず云って、地へ坐っていた。
残念でならなかった。又十郎は肩で喘ぎながら、敗れた木剣を把って、
「短かった。この木剣が、もう三寸程も長かったら、お父上には負けないものを」
と、未練そうに呟いた。
その負け惜しみの口悔しそうな態が、真実味を漂わせて、見ている家光や周りの者にはおもしろかった。人々の面にかるい苦笑がながれた。
するとふいに、但馬守が、
「だまれっ」と、辺りの耳を奪うような大喝で叱った。面に、朱をそそいで立腹したのである。
「今の一言は、柳生の家系の者にはない事だ。未練な愚痴。無知な嘆声。聞き苦しいたわ言である。そのような心根ゆえに、この老人の太刀にすら一堪りもなく打ち据えられるのじゃ。今日という今日、わしも初めて知った。平常人々から、但馬どのは子に甘い、子に眼がないと嗤われていたことの真実を」
――怒り顫いていうのである。はっと又十郎は地へ手をついてしまった。生れて初めて見た父の形相に彼も慄えた。
恐い父としていた平常の父の姿は、実は甘えているからの恐さであった。