Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

泣きたい顔になった。

銀の釵が沈んでゆく。

嫁入りまで、挿してはいけないと、母にいわれたのを――

沼尻の川なので、浅そうに透き徹っては見えるけれど、底泥土がやわらかで、仮橋から墜ちた子供などが、何人もそこでは死んでいた。

怨めしげに、水を見ていた。

でも、仕方がないと、諦めたように、お次が悄々と立ち去ってゆくと、河原にいたお菰の岩公は、泥土の中へ、そろそろと入って行った。

「おお深けえ」

底は辷る。

いくらでも、脚が入る。

でも岩公は、やめなかった。腰から胸までへ、泥だらけの蓮根掘りみたいに、釵を探した。

「ねえってことはねえ。ねえってことはねえ」

独りでぶつぶつ言いながら、日が暮れるのも知らなかった。

紫木綿の包みを胸に、稽古を終えて帰って来たお次は、星明りの水に、獺みたいな人影が、ざぶざぶ動いているので、

「おや、誰?」

と、眼をまるくして、

「――岩公じゃないの。何してるの」

「不思議だ。ねえ筈はねえ」

「何が」

「お嬢様の」

「あら。おまえ私の釵を探していてくれるのかえ。そんなら、もうよしておくれ。風邪をひくよ、寒いのに」

お次が、しきりに止めたので、岩公はむっそりと河原へ上がった。