Classiques japonais avec furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
「これでいいだろう」
金を出して、通船楼のおかみさんは、唐桟の一巻を、自分の後ろへころがした。
数えてみると、二十両あるので、清吉はかえって眼をみはってしまった。まだ二十歳を幾つも出ていまいと思われるのに、青い眉と黒豆のような歯並びをしているおかみさんは、
「ホホホホホ。揶揄って上げたんだよ」
と、独りでおかしがった。
「へえ、ひどい事を!」
「あたりまえさ。良人にわたしが見立てて着せようというのに、穢い値切り方をしたの、買い惜しみをしたのと聞いたら、着るにも気色が悪いと云って、良人だって着やしないし、わたしの意気だって届かないじゃないか」
「これはどうも、手放しなところを」
「お惚気賃は、前払いで云っている筈なんだよ」
三両の聞き賃かと思えば、ごもっともでといくらでも神妙に聞ける。勿論、清吉だってまだ若いのだし、木の股から生れたのでもないから、こんな女の素惚気は決していい気持なものではないが。
それに清吉は、三年のうち二年を旅暮しで送っている身だった。家は長崎で、反物や装身具や支那画などの長崎骨董を持って、関西から江戸の花客を廻り、あらかた金にすると、春の雁のように、遥々な故国へ帰ってゆくのである。