Classiques japonais avec furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
かえって、頼もしい女だという気持がつよくして来た。
魚の皮みたいな鈍い海が見えた。漁師の家から赤い火がもれていた。御旅の曲がり松は、磯原の真ん中にあった。
(……来ているかどうか?)
清吉は、心とは反対に、足を弛めて近づいて行った。
秀八は来ていた。
座敷着を代えて、黒っぽい着物の裾を折り、髪も崩して、手拭の耳を咥えていた。
「……オっ」
つい、意外だったような声を清吉は出してしまった。
「来ていたのか」
「だって、約束した筈じゃありませんか」
「いや……俺の方が、つい遅くなったからさ」
「おまえさん、支度は」
「途中ですらあな。……何も大した身支度は要りゃあしない。それより、おめえはもうそれでいいのか」
「ちょうど、深川の水に六年住んで、今夜が見納めかと思うと、何だか、名残惜しいけれど……」
「見納めだなんて、縁起でもない事を云わぬがいい。また、いつだって江戸へ来られるじゃないか」
「でも、長崎くんだりまで行って、お前さんに捨てられたら、わたしゃそれこそ迷ってしまう」
「今は、何も云うめえ。どこか旅宿へでも落着いてから云うが、おれはおめえの心意気が欣しいんだ。捨てるくらいなら初めから、費い途も聞かずにあんな金を出しはしない」