Classiques japonais avec furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
旗岡巡査
雲雀も啼かぬ日
一
雲雀も啼かぬ日
一
河が吼えるように河の底から、船頭の大きな声が、
「――船止めだとようっ」
「六刻かぎりで、川筋も陸も往来止めだぞうっ」
船から船へ、呶鳴り交わしてから触れ合っていた。
下総の松戸の宿場。
雪はやっと、降りやんではいたが――
きのうからの大雪は、この地方にまでわたっていた。三月の桃の節句だ。雲雀は死んだように黙ってしまい、菜の花も青い麦も雪の下だった。万延元年のこの日は、江戸表だけの天変地異ではなかったのである。
醤油船の権十は、
「お松、何をいつまで、愚図愚図してるだ。まだ燃え付かねえのか」
煙に顔を顰めながら、岸へ繋綱を取っていた。
権十の娘は、まだ十五、六の小娘だった。
「だって、父っさま、薪が濡れているで、いくら燃やしても、燃えやしねえだもの」
煤りかけている七輪へ顔を寄せて、眼を紅く爛らせながら艫の方からいう。
すると隣の干鰯船から、仲間の八が、苫を剥くって、
「――権十、飯の支度か」と顔を出した。
「そうよ、これからだ。嬶あに死なれてからというもの、お松の奴アまだからっきし子供だしよ、美味え飯なんぞ喰ったこたあねえ」
「そういっちゃあ、お松ッ子が可哀そうだぜ、十五にしちゃよく働く方だ。