Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

二

まあ、もう少し見ていてくれい」

「よかろう」

と一人が下でいった。するとまた一人が、

「鈍さんには適任というものだ」

というと、緊張した中に、笑い声がクスクス流れた。

二度目に仰ぐと、もう旗岡巡査の顔は窓に見えなかった。黒々と佇んでいた巡査たちは、再び三階の燈火に異変が起るのを待ちながら、固唾を嚥んで、時計の秒針を胸に数えていた。

二

旗岡巡査は、暗い窓口から内へ顔を退くと、跫音しずかに運んで、一室の扉を、そっと排した。

「…………」

開くのである。

鍵は、彼を入れないためにかけられてあったのでなく、彼が、自分の身をそこへ隠して後、自分で内側からピンと卸してしまった物であった。

床の上に、一挺の短銃が冷たく光っている。

豚のように肥えた死骸が一つ、寝台の下に俯つ伏していることがわかる。

血らしいものは、わりあいにこぼれていなかった。絨毯の模様になって見えているのかも知れない。

「…………」

旗岡巡査は、黙って、壁の側に立った。

寝台に腰をかけている犯人は、細巻の女煙草を紅い唇にくわえ、煙たそうに眼を細めながら、妖美な顔をよけい妖美に顰めている。

振袖のような絹の寝巻に日本の帯を締めて。