Classiques japonais avec furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
三
彦太は、迷っていた。
その時、表の土間口で、
「彦よ。おるか」
「誰だあ」
「おらよ。中野宿の茂作よ」
「お。上がらっしゃい」
「うんにゃ、上がるめえ、迎えに来たのじゃ。延徳沖の酒屋の息子な、要助どんじゃ。七年ぶりで、故郷へ帰えったで、一目会いたいといわっしゃる。来られるかの」
「ほっ、要助が、――そうけ。――長う会わんの、おらたあ、腕白友達じゃ、行くとも、すぐ行く」
もう星が出てるが、野良に出ている者は、まだ帰らなかった。彦太は、広い、真っ暗な家を、空っぽにして、出て行った。
三
幼友達の要助は、中野宿の川魚茶屋で、酒の支度をして、彼を待っていた。
彦太は、会って、驚いた。
「ほッ、おめえ、侍になったんか」
「む、ずっと京都にいたが、今度、佐久間先生のお供を兼て、松代藩へ用事があって帰郷したよ。達者かい、彦太」
「ふーム」
彦太は、うめいて、急に、対等な口がきけなくなった。この地方で、てッぱ屋と俗にいう、馬口労相手の居酒屋の伜が大小、袴、髷や言葉つきまで、見違えるようになっている。彦太は、羨望と、反抗と、それから自恥を感じた。
「よく二人で、この中野宿の道場へ、毎晩通ったもんだったけな。