Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 143 455 caractères · 290 écrans
「えッ、音次郎が死んだ?」
一番驚いたのは老巡礼の百松です。
「一昨日の晩、娘のお崎さんの留守中に、頸を縊って死にましたよ」
蓼斎の後ろから顔を出したのは、下谷一番と言われた万両分限の主人、佐野屋正兵衛の分別顔でした。
「お前さんは、佐野屋さん?」
「この谷中の奥に小さい寮があるので、店の前を通るごとに、古道具を冷かしたりして、川越屋とは懇意になりましたよ」
佐野屋正兵衛は弁解ともなく、こんなことを言うのです。
その間、娘のお崎は黙って首をうな垂れておりました。二度まで平次やガラッ八に顔を合せたのを、ここでは言って貰いたくなかったのでしょう。
近所の衆らしい女達も、コソコソと帰りました。続いて蓼斎と正兵衛も、用事を拵えて立ち上がります。残ったのは、店で使っている十五六の小僧が一人と、あとは娘のお崎だけ。
「お崎さんとか言ったね。――お前と顔を合せるのも、これで三度目だ。込み入った話がありそうだが――」
平次は静かに煙草入を抜きます。八五郎はその間に気をきかせて、老巡礼の百松と小僧の栄吉を外に連れ出します。
「四度目ですよ、親分さん」
「はて?」
「一と月ばかり前、近所の寺方へ押込が入ったとやらで、三輪の親分さんと一緒にお出でになりました」