Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

Lisez 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 143 455 caractères · 290 écrans

Aozora Bunko

七

――時々見張りをさせられましたから」

「有難い、それが解りゃ」

「…………」

お由は声を潜めました。

七

その晩神田の平次の家は焼けたのです。

こればかりは、銭形平次も気が付かなかったのでしょう。毒酒の計略は見事に見破りましたが、それだけで油断をしていると、その夜の丑刻半(午前三時)頃、三方からあがった火の手は、瞬く隙に平次の長屋を焼き落し、近所の二三軒を半焼けにして、漸く納まったのでした。

風がないのと、暮の街で注意が行届いたので、これだけで済んだのは不幸中の幸いでしたが、困ったことは、肝腎の銭形平次が、それっきり行方知れずになってしまったことです。

――銭形の親分が焼け死んだとよ――

――表裏の戸口は外から閉めてあったそうだ、お静さんが命からがら逃げ出したというぜ――

そんな噂が八方から飛びました。全く、焼跡にションボリと立っている、気の抜けたようなガラッ八の姿や、顔から腕へかけて、晒木綿で巻かれた、痛々しいお静の様子を見ると、銭形平次が死んだというのも、満更の噂ばかりではない様子です。

昼頃には八丁堀の与力笹野新三郎も来ました。江戸中の顔の良い御用聞も、五人十人と集まって来て、夕方には、それが二三十人になり、打ち湿った様子で、ポッポと烟る灰を掻かせております。