Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 143 455 caractères · 290 écrans
四
「親分、好いものが手に入ったネ」
「フム、あまり好すぎるよ」
かなり使い込んだ剃刀、柄を観世縒で巻いて、生渋を塗ってありますから、ひどく特色のあるものですが、不思議なことに、大して血が付いてはおりません。
「親分、何を考えていなさるんだ」
「可怪しなことがあるよ、新しい歯こぼれのあるところを見ると、剃刀で切ったには相違ないが、一度血を拭いて、仕舞い込んで、また落したのはどういうわけだ。――余程あわてたのかな」
「…………」
「箱を背中へ入れて、お前をかついだ様子じゃ、下手人はよほど胆のすわっている男らしいが――」
平次はいつまでも剃刀を睨んで頸を捻っておりますが、さすがにこの謎は解けそうもありません。そのうちに、急を聞いて、町役人が、一隊の野次馬と一緒にやって来ました。
四
石井三右衛門の邸は、大変な騒ぎになりましたが、まだ、正気付いたばかりで、二人の医者が詰め切りで様子を見ている主人の三右衛門には聞かせるわけにいきません。
その中に銭形の平次は、疾風迅雷のごとく、仕事を運びました。その晩、第一番に逢ったのは、支配人の禄兵衛、月代の光沢の良い働き盛りの男で、背は高い方、少し気むつかしそうですが、その代り堅いのと正直なのが看板で、家中の者が一目も二目も置いております。