Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

Lisez 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 143 455 caractères · 290 écrans

Aozora Bunko

銭形平次捕物控

一

一

「八、あの巡礼を跟けてみな」

平次は顎をしゃくって見せました。が、浅草橋の御見附を越して、浜町の方へトボトボと辿って行く男巡礼、頽然とした六十恰好の老爺に、何の不思議があろうとも、ガラッ八の八五郎には思えなかったのです。

「あの、拙い御詠歌をやって歩く――」

「そうだよ」

八五郎はそれ以上の問答を重ねませんでした。主人の命令を受けた猟犬のような素早さで、老巡礼の後をヒタヒタと跟けて行ったのです。

老巡礼は口の中で何やらブツブツ呟きながら、一軒一軒の戸口に立って、恐ろしく下手な御詠歌を歌って歩きましたが、どこでも相手にしてくれそうな様子はありません。

何軒目か――小意気なしもたやの前へ来ると、格子が開いて、盆の上へ小銭を捻ったのが一つ、四十恰好の女が差出しました。

老巡礼の御詠歌は、その報謝とは関係なく、しばらくは続きましたが、歌が終ると、

「――お染やぁい」

さまで、高くはありませんが、身に沁みるような悲痛な声が、老巡礼の唇を衝いて出たのです。

主人の女はしばらく躊躇いましたが、やがて思い切った様子で、

「お前さん、どうしたというんだい、お染さんとかを、尋ねてでもいなさるのかい」