Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 143 455 caractères · 290 écrans
三
「ヘエ――」
「ね、親分、八五郎さんとかに一緒に行って貰っては、お化けにも悪人にも用心させるから、今晩そっと来て、寮へ入り込んで頂けないでしょうか」
とお染。
「なるほど、それも面白かろう。そう言っちゃ何だが、お染さんは思いの外軍師だね」
「あれ親分、冷かしちゃいけません」
三
その晩、ガラッ八の八五郎が、根岸の百姓町にかかったのは亥刻(十時)を少し廻った頃、御行の松の手前を右へ折れて、とある寮の裏口へ、忍ぶ風情に身を寄せました。
平次に冷かされつけている狭い袷、弥蔵を念入りに二つ拵えて、左右の袖口が、胸のあたりで入山形になるといった恰好は、「色男には誰がなる」と、言いたいようですが、四方が妙に淋しくて、住む人も少ないせいか、ろくな犬も吠えてはくれません。
八五郎は、裏口へ寄り添ったまま、弥蔵の中から取っておきの拳固を出して、そうッと撫でるように、二つ三つ雨戸へ触ってみました。それを待っていたように、そっと中から開けたのは、寝巻姿のお染、まだ寝乱れてはいませんが、醜いながらも妙に娘らしくなまめきます。
「八五郎さんかい?」
「うむ、用意は?」
引入れて雨戸を締めると、中は真っ暗、手と手を握った二人は、遠い廊下の有明を目当てに、逢曳らしい心持で、奥へ辿りました。