Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 143 455 caractères · 290 écrans
五
お柳の死骸の手に握ったのだけを取残して、たぶん下手人が持って行ったのでしょう。
五
「父さんは?」
不意に、素晴らしい最高音が、叱りつけるような調子で平次の耳に響きました。顔を挙げると、少し高くなりかけた朝陽の中に立ったのは、吉五郎の娘お留の、物怖じしない活き活きした顔です。
「お留か、――気の毒だが、お前の父親は番所に引かれて行ったよ」
平次の声には、岡っ引らしくない穏やかさがあります。
「何をしたというんです。父さんは、どんな悪いことをしたんです」
お留の声には娘らしい若さのうちに怒りが燃えます。
「お柳を害めた疑いがかかったのだよ」
「まア、――そんな馬鹿なことがあるものですか」
大きな眼が少しうるんで、気象者らしい唇が、ピリピリと顫えます。おっとりしたお柳の美しさには比べられないにしても、箱入娘の少し高慢なお糸などは、及びもつかぬ魅力を持っているお留でした。
「何が馬鹿なんだ、お留」
「だって、お柳さんを怨む筋なんかないじゃありませんか、――有馬屋ならともかく」
「吉五郎が有馬屋を怨んでいるのか」
平次の問いは間髪を容れぬ呼吸を掴みました。
「え、町内で知らない者はありゃしません。