Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
――降りるぞ、源八」
「…………」
「いいか、おまえの頭の上へ跳ぶぞ、見事に、斬れよ。――だが、わしを宙斬りにし損ねると、わしの背にある物干竿が、おまえの直身を、竹のように割ってしまうかも知れないぞ」
「アッしばらく――。小次郎様、しばらくお待ちください。……そのお声、思い出しました。また、物干竿の銘刀をご所持のうえは、真の佐々木小次郎様に違いありません」
「信じたか」
「けれど――どうして左様なところへは?」
「後で話そう」
――はっと源八は首をすくめたのであった。仰向いている顔を越えて、小次郎の袴の風が、さっと、散り松葉と一緒に、自分のすぐうしろへ落ちて来た。
紛れもない佐々木小次郎を眼の前に見直すと、源八は、かえって、不審の靄につつまれてしまった。この人と自分の主人草薙天鬼とは同門の間がらである。従って、小次郎がまだ上州の鐘巻自斎の許にいた時分は、幾度も会ったことがある。
だがそのころの小次郎は、こんな美々しい若衆ではなかった。目鼻だちは幼少からきかない気性をあらわして、凜々としていたが、師匠の自斎が、華美は嫌う人であったから、そこの水汲み小僧であった小次郎は、元より質素で色の真っ黒な田舎少年でしかなかった。