Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

「お杯を下さるとか」

伝右衛門が坐ると、

「されば。――十郎左、その杯を、伝右殿に」

「はい」

酌ぐと欣しげに、

「十郎左どのの杯じゃの」

伝右衛門は、干して返した。

十郎左は、手を振って、

「もう、参りました」

「磯貝、卑怯」

と、下の間で、近松勘六がさけんだ。

伝右衛門は、手をのばして、

「これはいかな事。酌した杯、取らぬ法やある」

「でも、今宵は、飲べ酔うてござります。伝右殿、ゆるしませい」

と、廊下へ逃げた。

内蔵助は笑いながら、

「いやいや、十郎左は、あのような優男でござるが、酒は、したたかに飲りまするぞ。伝右殿、お逃がしあるな」

「返せ、敦盛」

伝右衛門は、戯れながら、とうとう、彼を捕えて、罰杯として、大きな杯でのませた。十郎左は、覆るように、坐って、

「討死」

と、いった。

「まだ、ちと、早い」

早水藤左衛門が、腕をすくって、

「もう一献」

「おいじめなさるな。もう……もう……敦盛は、この通り、首さしのべた」

「そんな弱い、十郎左ではない。よし、よし、飲まねば、あのこと話すぞ」

勘六や、瀬左衛門は、面白がって、

「そうそう、のまねば、あのことを、伝右どののお耳に入れよう」