Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
「……?」
おや、とその瞑目を四辺へ開いて、右門は不審な顔をした。
ぷーんと、酒の香がそこから匂って来るのだった。酔いどれでも近くに倒れているのかと見廻したが、そんな人影もない。
「……あ。これか」
やっと彼は、謎が解けた。石の前に誰が供えておいたか小さな備前徳利の口から霧のように立つ香りにちがいなかった。
――それにしても、誰がこれを?
と疑いながら、右門は徳利の口を嗅いでみた。酒の香はたった今、杉樽から移したように新鮮である。
「はてな? ……」
偶然、彼の眸が向いた草叢から、がさっと、逃げるように人影が起った。背よりも高い尾花の後ろである。
「誰だっ」
恐かったのは、先よりは右門だったのである。思わずそのせいで声が癇高く走った。
「……は、はい」
意外にも、女の返事である。右門は側へ行ってみた。そして再び身慄いに襲われた。なぜならば、やかに化けた女狐のように――草の根に顫いていた女は、野で見るには、余りに美しい。
襟すじの白さ、銀釵のかすかな慄え、帯の光――月の下とはいえ眼に痛いほど沁み入って来る。十九か二十歳。そして良家の子女であることはいうまでもない。