Classiques japonais avec furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans
自然に、猿は、尊敬と愛慕の的になった。反対に、牢頭のわしの威光は、僻みか知らぬが、以前のようでなくなった。わしは事々に猿へ辛く当りちらした。些細な落度を、威猛高に罵って、猿を撲らせたり、蒲団縛りにして飯を食わせなかったりした。だが、そうすればする程、牢内の人気は猿へ傾いて行く気がした。
「牢頭、二、三日経つと、私たちは一遍、牢を出されて、世間の風にふかれる事ができますね」
ある時。
猿に腰を揉ませていると、猿がそういった。
嘘にでも、そんな話は、わし達の胸をどきっと打って、
「えっ。どうして?」
「何だか、そういう気がするんで。――というのは、ゆうべも一昨日の晩も、御城下で戦争があったと私は思いますから」
「ふム……。どうしてそんなことが分るか」
「夜中に、あの切窓の隙間から見える空が、毎晩、赤く見えました。それから、獄人へ配って来る飯の時刻が、遅かったり早かったり、狂って来ました。また、じっと眼をつぶって、外の気配に気を澄ましていると、どうしても戦争か何か起っているふうです。――稲葉山の斎藤義龍と、鷺山城の斎藤道三秀龍とは、表面は父子ですが、実は義龍は、道三が殺した旧主の子だという事ですから、また内乱を起しているにちがいありません」